東京高等裁判所 昭和31年(う)766号 判決
被告人 大塚浅次
〔抄 録〕
先ず職権をもつて調査すると、原判決は本件公訴にかかる一つの賍物牙保の事実(原判示一の事実)と二個の窃盗の事実(原判示二及び三の事実)を認定し、これに対する適用法規として右賍物牙保の点につき刑法第二百五十六条第二項、各窃盗の点につき同法第二百三十五条を掲げ、なお以上の事実につき同法第四十五条、第四十七条、第四十八条第一項本文、第十条を適用して主文において被告人を懲役八月及び罰金二千円に処し、かつ右罰金不完納の場合における労役場留置の期間を定めてこれが言渡をしているのであるが、右刑法第二百五十六条第二項の規定によればその所定の刑期及び罰金額は十年以下の懲役及び千円以下の罰金と定められており、他に罰金等臨時措置法の規定を適用するのでなければ右のごとく主文において懲役刑とともに罰金二千円の言渡はできないものといわなければならない。換言すれば、原判決は主文の刑のよつて来る所以のものを説明していないのであつて、この点に関し判決に理由を付しないものといわなければならない。すなわち、原判決は弁護人の論旨につき判断をなすまでもなく、すでにこの点において破棄を免れない。
(花輪 山本 下関)